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eBirdのデータで判明:ヨーロッパハチクイの分布域が北へ拡大。気候変動との関連が裏づけられる

鳥類の分布域の変化は、気候変動などの環境変化の兆しかもしれません。eBirdの観察記録は、研究者が現在進行している分布域の変化を追い、種と環境の関係をより深く理解するのに役立っています。

このたび、ドイツの研究チームにより、eBirdなどのデータを利用して、ヨーロッパハチクイの分布域の変化と、気候変動の関連の研究結果が発表されました。以下、ebird.orgの掲載記事から抜粋してご紹介します。

ヨーロッパハチクイは長距離を移動する渡り鳥で、アフリカ南部で越冬し、従来、西はスペインから東はモンゴルまでの地中海性気候の地域で繁殖していました。ここ数十年の間に、その繁殖域は、ドイツ、スイス、フランス、ポーランドを含む中央ヨーロッパに拡大し、約1000km北上しています。

専門家は、温暖な気候を好むこの種が北上しているのは、ヨーロッパ全域の気温上昇が要因であると考えています。そのため、ヨーロッパハチクイは気候変動の指標種と考えられています。しかし、近年まで、気候変動とヨーロッパハチクイの分布域の関係は解明されておりませんでした。

研究チームは、ヨーロッパハチクイの個体数と気候の関係を調べるために、統計的なモデル化手法と、15万件以上のヨーロッパハチクイの観察情報を持つeBirdなどの市民科学データベースのデータを使用しました。その結果、気候とヨーロッパハチクイの個体数には強い関係があり、モデルに基づく気温と降水量の条件がより適している地域では、個体数が多くなることがわかりました。このことから、ヨーロッパにおけるヨーロッパハチクイの繁殖域は、主に気候条件の影響を受けていることが示唆されました。

Reference:

Stiels, D., H.-V. Bastian, A. Bastian, K. Schidelko, and J. O. Engler (2021) “An iconic messenger of climate change? Predicting the range dynamics of the European Bee-eater (Merops apiaster).” Journal of Ornithology 162(3): 631–644 (Open access)

この記事は、ebird.orgのニュースからピックアップし、編集しました。原文はこちらをご覧ください(英文)。